4枚の羽
おっす！
牛乳、飲んでっか？
『牛乳に相談だ。牧場』、現場監督のシンサクです。
＞セバスチャンさん
＞どうしてみんなをクビにしちゃったんですか！？
＞何のために今まで牛乳ばかり飲んできたんですか！？
＞そんなカントクの姿は見たくありません。
＞早く仲直りしてください！！！
ああ、皆まで言うな、皆まで言うな。
全部わかってるよ。
実は昨日の夜、
台風の真っ只中、オレはひとりで風車小屋に向かったんだ。
あと少しで風車も完成するというのに
仮止めしかしてない羽が壊れてしまったら何もかもがパーになってしまうからね。
しかし、あの殴りつけるような雨と強風の中じゃ、
全く作業がはかどらない。
自分の体が飛ばされないように支えているだけで精一杯。
もはや、これまでかと思った時だよ。
一瞬、幻かと思ったよ。
だってオレがクビにした甚八、サブロウ、吉田くんの3人がいるんだから。
あいつら・・・
「帰れ、バカ野郎。
こんな雨の中、おもてに出ていたらカゼひくぞ！」
「牛乳を飲んでるから大丈夫です！！」
「オマエら、全員クビにしたはずだぞ！」
「まだ働いた分の牛乳を飲ませてもらってません！！」
いちいち口答えばっかり。
いつのまにか、たくましくなりやがって・・・。
みんなで泥だらけになったおかげもあって
明け方には無事、風車も完成したよ。
風車は、1枚でも羽が欠けたらダメになってしまう。
昨日の台風の中、いつの間にか協力し合っていたオレたち。
あの風車の4枚の羽のようにオレたちも誰かが欠けたら・・・
思えば、甚八やサブロウもオレと同じくらいこの現場を愛しているんだ。
きっと、その想いの強さがあのグラサンや腹巻姿に表れていたのだろう。
吉田くんにしたってそうだ。
夢子ちゃんと出会った思い出のこの牧場をおろそかにするはずなんてない。
みんな不器用な牛乳野郎なんだ。
オレも少々厳しすぎたのかもしれないな。
今回ばかりは、牧場に、いや牛乳に教えられた気分だよ。
なんだか知らないけど、
気がついたらアイツらともすっかり仲直りしちゃってた。
アッハッハ。
仲間っていいなあ。
風車のやつも笑ってらあ。
